作者:暴力と破滅の運び手
初出:『ドンキー・アーカイヴvol.4 パンとお菓子 準備号』2026年1月10日文学フリマ京都10にて頒布
ジェイムズは出勤途中でトラックに轢かれて即死し、そのまま地獄に落ちた。
地獄はイメージとは違い、病院のように清潔で無機質な空間だった。轢かれる直前に着ていたスーツをそのまま身に着けていた。これから何をされるのかわからないけれど、どうせだったら部屋着やトラックスーツのほうがよかったな、と思った。もしかしたら過ごしやすい格好のほうがよかったのかもしれない。
誘導に沿って歩いていき、診察室のようなところに入った。
部屋の中央に、人ひとりがすっぽり納まるような大きさの箱が置いてあった。そこに入ると己の罪状が言い渡されるらしい。身体を横たえると、箱に取り付けられたスピーカーから陽気な音楽が流れ、『あなたの罪を数えているよ♪ そのままもうちょっと待ってね♪』という明るい声が聞こえてきた。ジェイムズはショッピングモールのポップコーンメーカーを思い出した。
やがて音楽が止み、スピーカーの向こうに人の存在を感じた。
「ジェイムズ・グレアムさん。あなたは生前に重罪を犯し、煉獄での罪の浄化も不可能であると判断されたため、即時地獄へ収監されることになりました」
そうなんだ、と思った。いったい何の罪だろう。
ジェイムズは生まれてからここまでのことを思い返そうとした。若いころは多少法に触れるようなこともしたかもしれないが、せいぜい友達と大麻を吸ったとか、ごく短い距離の飲酒運転をしたとか、そんなことしか思いつかなかった。盗みや殺人をはたらいたこともなければ、人を欺いて金銭を詐取したこともない。まったく心当たりがなかった。
見知らぬ声はいたって冷静にジェイムズの罪状を読み上げた。
「あなたの罪は、**『ペニスをパンに挟んだ罪』**です」
「え?」
何かを聞き間違えたのだろうと思い、礼儀正しく「もう一度お願いします」(アイ・ベッグ・ユア・パルドン)と訊ねた。すると、スピーカーの向こうの声はゆっくりと一語ずつ区切りながら、**『ペニスをパンに挟んだ罪』**です、と教えてくれた。
「どうしてそんなことが罪に?」
「ここはカトリック教徒専用の地獄です。
カトリックにおいてパンは単なる食物ではなく、主イエス・キリストが「これは私の体である」と宣言された**「神の糧」の象徴です。ゆえに、生命を維持するための「聖なる糧」を不適切な目的で利用することは神の身体に対する冒涜にほかならず、また聖なるものと本来隠されるべきプライベートな部分を混同させることは神が定めた世界の秩序を乱す破廉恥な行いです。ゆえに、ペニスをパンに挟むことは殺人や窃盗と同等の重罪**に該当します」
「そんな……」
心当たりがないわけではなかった。
かつてゲイポルノ男優として生計を立てていたジェイムズは、確かにペニスをパンに挟んだことがあった。ホットドッグのように、レタスを敷いて、ペニスの上にはケチャップとマスタードを掛けたはずだった。